賃貸でドールと暮らす|床・壁・寝具の「原状回復」で揉めないための予防と退去前チェック
引きずり傷、フローリングの油ジミ、自立させた足裏の跡——損傷はどこから生まれ、どう防ぐか。国交省ガイドラインの原則とあわせて整理します

損傷はどこから生まれるか(リスク一覧)
賃貸でドールと暮らすことを禁じる契約条項はまずありません。問題になるのは、暮らしの中で床・壁・寝具に残る跡です。当店に寄せられた退去時の相談を発生源ごとに分けると、ほぼ次の 5 つに収まります。
原状回復の考え方(国交省ガイドライン)
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を「借りた当時の状態に戻すことではない」と明確にしたうえで、次のように整理しています。
| 区分 | 内容 | 費用負担の考え方 |
|---|---|---|
| 経年変化・通常損耗 | 普通に住んでいれば生じる劣化・損耗 | 賃料に含まれる(貸主側) |
| 借主の故意・過失など | 故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用を超える使用による損耗・毀損 | 借主が復旧する |
| 経過年数の考慮 | 借主負担の場合でも、年数が経つほど負担割合を減らす | 長く住むほど借主の割合は下がる |
いちばん多いのは床:保護材の選び方
床の保護材 4 つの比較
チェアマット(ポリカーボネート製)
長所
- 油を通さず、染み込みを完全に防げる
- 硬いので荷重を分散し、凹みも防げる
- 透明なら床の見た目を損なわない
短所
- 価格が高め(数千円〜)
- 表面が滑りやすく、自立させると倒れやすい
ジョイントマット(EVA 樹脂)
長所
- 安価で敷き広げやすい
- クッション性があり、倒れたときの衝撃も吸収する
短所
- 継ぎ目から油が床まで落ちることがある
- 柔らかいので自立させた足裏の荷重で沈む
ラグ・カーペット
長所
- 部屋になじむ
- 引きずり傷は防げる
短所
- 油を吸って裏まで通すことがある
- 洗えないものは染みが残る
何も敷かない
長所
- 費用がかからない
短所
- 油が床材に直接染み込む
- 自立させると足裏の形で凹みが残ることがある
おすすめは「定位置にはチェアマット、移動経路には毛布かヨガマット」の組み合わせです。ドールを普段置いておく場所(椅子やソファの下)だけを硬い透明マットで覆い、動かすときは毛布に乗せて滑らせる——これで油ジミ・凹み・引きずり傷の 3 つをまとめて防げます。

壁と寝具で気をつけること
| 対象 | 起きること | 予防策 |
|---|---|---|
| 石膏ボード壁 | 吊り下げフックの穴・変形 | 壁に掛けない。スタンドか床置きで保管する |
| 壁紙 | もたれかけた跡・油の転写 | 壁に直接もたせかけない。間に布を挟む |
| 備え付けのカーテン | オイルと染料の色移り | ドールをカーテンに触れる位置に置かない |
| 備え付けのマットレス | 凹み・油ジミ | 防水プロテクターを敷く。ドールは就寝時以外は下ろす |
| 畳 | 油の染み込み・イグサの変色 | 畳の上に直接置かない。上敷きを使う |
壁掛けの保管は、下地(柱)のある位置でなければ 30kg の荷重を支えられず、石膏ボードに穴が開きます。保管方法そのものは自立・スタンド・吊り下げ保管 完全ガイド、寝具側の対策は添い寝のための寝具選びにまとめています。
退去前のセルフチェック
なぜ TPE は床を汚すのか
TPE は柔らかさと弾力を保つために、製造時にオイル(可塑剤)を含ませて成形されます。このオイルは時間とともに表面へにじみ出てきます(オイルブリード)。床に接している面からは、そのまま床材へ移ります。シリコンはこの性質がほとんどないため、床を汚すリスクは大きく下がります。
オイルブリード自体を減らすには、月 1〜2 回のパウダリングと、高温多湿を避けた保管が効きます。素材ごとの性質と手入れはTPE ラブドール 完全ガイドにまとめています。
よくある質問
賃貸でラブドールを置くことは契約違反になりますか?
一般的な賃貸契約にラブドールを禁止する条項はまずありません。生き物ではないため、ペット禁止条項にも当たりません。注意すべきは所持そのものではなく、床や壁に残る跡です。
フローリングの油ジミは退去時に請求されますか?
ケースによります。国交省のガイドラインでは、通常の使用を超える損耗は借主の負担とされていますが、油ジミがそれに当たるかどうかは契約内容と、管理会社・貸主との協議で決まります。判断が分かれる状態を作らないよう、定位置の床を保護しておくのが最も確実です。
いちばん安くて効果のある対策は何ですか?
ドールの定位置に透明なチェアマットを敷くことです。油を通さず、荷重も分散するため、油ジミと凹みを同時に防げます。移動のときは毛布に乗せて滑らせれば、引きずり傷も防げます。
シリコンのドールでも床は汚れますか?
シリコンはオイルのにじみがほとんどないため、油ジミのリスクは大きく下がります。ただし荷重による凹みと引きずり傷は素材に関係なく起きるので、床の保護は同じく必要です。ハイブリッド(シリコンヘッド × TPE ボディ)は、床に接するのがボディ側なので TPE と同じ対策をしてください。
退去の立ち会いで跡を指摘されたらどうすればいいですか?
その場で合意せず、指摘された箇所を写真で記録してください。入居時の写真があれば照合します。請求内容に納得できない場合は、消費生活センター(局番なし 188)に相談できます。
ミニドールでも対策は必要ですか?
7〜8kg のミニドールなら荷重による凹みはほぼ起きません。ただしTPE である以上、油ジミの対策は同じく必要です。定位置に小さめのマットを敷いておけば十分です。



