光とドール|紫外線・照明・窓際が、肌とメイクをどう劣化させるか
「直射日光を避ける」だけでは足りません——窓ガラスは UV-B をほぼ止めますが、UV-A は大部分を通します。部屋のどこなら安全かを波長から考えます

光は、熱や湿気と並ぶ劣化要因
ドールの劣化要因として、熱・湿気・オイルのにじみはよく語られます。光——特に紫外線——は「直射日光を避ける」の一言で済まされがちですが、黄ばみ・色あせ・メイクの退色の多くに関わっています。しかも熱や湿気と違って、劣化が目に見えるまで数か月かかるため、気づいたときには戻せません。
UV-A と UV-B、窓ガラスが通すのはどちらか
紫外線は波長によって UV-A(おおむね 315〜400nm)と UV-B(280〜315nm)に分かれます。地表に届く紫外線の大部分は UV-A です。そして重要なのは、一般的な窓ガラスは UV-B をほぼ通さない一方で、UV-A の大部分は通すという点です。
部屋のどこが危ないか
| 場所 | 光の当たり方 | リスク | 対策 |
|---|---|---|---|
| 窓際(1m 以内) | 時間帯によって直射が当たる | 高 | 置かない。撮影時だけ短時間 |
| 窓から 1〜3m | 反射光・間接光 | 中 | 遮光カーテンかレースカーテンを併用 |
| 窓から 3m 以上 | ほぼ間接光のみ | 低 | 通常の保管に向く |
| クローゼット・押し入れ | 光が入らない | ほぼなし | 長期保管に最適(湿気には注意) |
| ベランダ・屋外 | 直射日光(UV-B も含む) | 非常に高 | 干さない。撮影も短時間に |

レースカーテンは光を和らげますが、紫外線を大きく減らすものではありません。紫外線を減らしたいなら、UV カット加工のカーテンか、窓ガラスに貼る UV カットフィルムが有効です。いずれも製品ごとにカット率が表示されているので、数値を確認して選んでください。
照明の種類による違い
室内照明とドールへの影響
LED 照明
長所
- 一般に紫外線の放射がごく少ない
- 発熱が少なく、素材を温めにくい
- 撮影用にも向いている
短所
- 製品によって色味(演色性)が違うため、撮影では肌の色が変わって見えることがある
蛍光灯
長所
- 部屋全体を均一に照らせる
短所
- LED に比べて紫外線をわずかに含む
- 至近距離で長時間当て続けるのは避けたい
ハロゲン・白熱灯
長所
- 暖かい色味で撮影映えする
短所
- 発熱が大きく、近づけると素材が温まる
- 撮影では距離を取って短時間に
置き場所を決めるフロー
やること・やらないこと
光からドールを守る
推奨
- 定位置は窓から 3m 以上離れた、直射日光の当たらない場所にする
- 窓際に置くなら UV カット加工のカーテンかフィルムを使う
- 長期保管はクローゼットなど光の入らない場所で
- 季節ごとに日差しの角度を確認し直す
- 撮影で窓際を使うときは短時間で切り上げる
非推奨
- ベランダや屋外で乾かす・干す
- 「窓を閉めているから大丈夫」と窓際に置き続ける
- レースカーテンだけで紫外線対策ができていると考える
- 暖房器具のそばに置く(光と熱が重なる)
- 片側だけ褪せているのに向きを変えずに放置する
よくある質問
窓を閉めていれば紫外線は入ってきませんか?
入ってきます。一般的な窓ガラスは UV-B をほぼ遮りますが、UV-A の多くは通します(ガラスメーカーの公開資料では、350nm 付近で約 40%、400nm 付近で約 90% 透過)。窓越しの日差しが当たる場所では、室内でも劣化は進みます。
LED 照明なら近くに置いても大丈夫ですか?
一般に LED は紫外線の放射がごく少なく、発熱も小さいので、照明としてはドールに優しい部類です。ただし窓から入る日光に比べれば、照明の影響はずっと小さいものです。照明より先に、窓との位置関係を見直してください。
黄ばみは光が原因ですか?
光だけではありません。オイルの酸化、汚れの蓄積、高温も原因になります。窓に向いた側だけ色が変わっているなら光が主因、全身が均一なら他の要因が大きいと考えられます。
シリコンなら光に強いですか?
シリコンは TPE に比べて紫外線に強く、変色しにくい素材です。ただし、ヘッドのメイクは素材に関係なく退色します。ハイブリッドの場合は、TPE のボディ側が光の影響を受けやすいので注意してください。
退色したメイクは直せますか?
描き直しは可能です。水性の画材を使った部分的な補正の方法はメイク直し・部分リペイント DIY 完全ガイドにまとめています。ただし一度退色したものを元の状態に戻すのは難しいため、予防が先です。
撮影で窓際の自然光を使いたいのですが
問題ありません。数十分程度の撮影なら影響は小さく、問題になるのは毎日何時間も当たり続ける定位置です。撮影が終わったら窓から離れた場所に戻してください。

